「かみさまのいうとおり!」9巻(湖西晶)

かみさまのいうとおり!  (9) (まんがタイムKRコミックス)

かみさまのいうとおり! (9) (まんがタイムKRコミックス)

言わずと知れたきららの長寿作品だが、この作品をちゃんと読んだのは今年が初めて。古本屋で1〜4巻が丁度揃っているのを見かけなかったら、今でもおそらく読んでいなかったかも知れない。現在のきらら連載陣の中で絵が格段に上手ということもなく、私がきららを読み始めた頃には既に6巻まで刊行されていたので、今更遡って読む必要もないかなと思っていた。

そういうわけで、お試し的な意味も込めて4巻まで読んでみたら見事にハマッてしまい、こうして最終巻まで一気に読む結果となった(5巻以降&湖西晶さんの他作品は新刊を買いました)。きららで長く連載されてきただけあって、ギャグは普通に面白いしキャラも可愛いし、古臭いと思っていた絵柄もこれはこれで味がある。何より、時折挟まれるシリアスな描写に心を打たれた。2巻描き下ろしの「遠い蟬時雨」なんて特に、月並みな表現だが泣いた。まりあがシスター見習いという設定は、聖職者なのにエッチな妄想をするというギャップを出すためだけのものではなく、くり子がまりあに何かと世話を焼くのも、幼馴染だからということだけが理由じゃないんだな、と。湖西晶さんはぱれっとでストーリー4コマの「ソーダさん。」シリーズを描いていたが、ギャグとストーリーのバランスという観点からもこの作品が湖西晶さんの最高傑作だと思う。
また、この作品の最大の特徴でもある「まりあがエッチな言葉に反応して鼻血を出す」ネタも、読んでいくにつれて下品どころかむしろ伝統芸能のような趣さえ感じるようになってきた。本当にエッチな言葉に反応することは少なく、普通の言葉を曲解して鼻血を出すことの方が多い。鼻血を出した後で、まりあは一体どの部分に反応したのかと前のコマを読み直すという、推理漫画のような楽しみ方ができる。その最たるものが6巻の「史上最高難度」。まりあたちの高校が男女共学でなくて良かったとつくづく思う。

この作品を通して読んで感じたのは、まりあ・くり子・山伏・なむたち4人の芯の強さと、この4人の距離感って凄く良いなということ。女子高生4人組というのは萌え4コマ界のテンプレートのようなものだが、他作品のどの4人組とも微妙に違う。悪く言えばドライ、良く言えば自立している。仲良しであり、お互いを信頼していたとしても、決して相手に依存はしていない。8巻の終盤以降は、そもそも4人が勢揃いした回の方が少なかった気がする。進路の件でも、自分自身の将来について悩むことはあっても、皆と離れ離れになることについて悩むキャラは一人もいなかった。「ひだまりスケッチ」のヒロが丁度そういうことで悩み、「けいおん!」の澪に至っては「皆と離れないこと」を選んでいたのもあって、まりあたちがその辺をあっさりスルーしてバラバラの進路を選択したのが印象的だった。宗教という心の支えがあることも関係していたのかも知れないが、常に一緒にいることが仲良しということじゃないと、口にはしなくても全員分かっていたのだろう。
振り返ってみると、4巻〜5巻でまりあの出生が明らかになるエピソードと、修学旅行でまりあが遭難するエピソード以外は、総じて平穏に時が流れていったという感じがする。山伏となむの恋愛問題の件も、展開自体は大方予想できた通りであって、別にどんでん返しがあったわけではない。ただ、幼い頃から誠実に宗教と向き合ってきたまりあたち(特にまりあとなむ)にとって、普通の女子高生ライフを送ることこそが何よりの修養だったのかも知れない。