「となりの魔法少女」1巻(七葉なば)

となりの魔法少女 (1) (まんがタイムKRコミックス)

となりの魔法少女 (1) (まんがタイムKRコミックス)

主人公の羽根井あきは、自らの願いを現実にする能力を持つ、いわゆる魔法使い。空中浮遊、透視、テレパシー、瞬間移動と、やろうと思えば何でもできる。しかし、小学校時代に魔法を使って「友達」を作ったこと、魔法で作られたものは決して本物にはならないという祖母の言葉がトラウマになり、他者との関わりを極度に恐れるようになってしまう。

そんなあきのことが気になり、何とか友達になろうとする相澤圭。圭からは「ウサ」と呼ばれる、観察と調査が大好きな宇佐神茜。とにかく、この3人のキャラクターバランスが絶妙。「魔法少女」のあき、「理屈少女」のウサのキャラが濃いのはもちろん、「普通少女」の圭が良いポジションを保っている。

あきは学校で極力魔法を使わないように努力していたが、それでもボロが出て浮いたり消えたりするところを目撃されることがあり、変な子と影で噂されていた。中学校時代のウサも、理屈っぽく不器用な性格が災いして、関わり合いにならない方がいいとクラスの中で認識されていた。そんな2人に対し、圭は何度拒絶されても強引に話しかけ続け、最終的にはどちらとも友達になった。誰かから聞いた噂話でなく、実際に見て感じたものを信じる、それが圭の「普通」だとウサは分析する。

圭はある意味、現代的な価値観を持った高校生だと思う。学校で一人ぼっちになりたくない。友達を作って、どこかのグループに所属して、余計な争いをせず平和に過ごしたい。そう考える人にとって、あきやウサのような変わり者はガン細胞であり、自分に害が及ばないよう遠ざけるか、自分と同じ考えに矯正するのが常だ。しかし圭は、変わり者の2人を遠ざけも矯正もせず、ありのままの2人を受け入れた。ナンバーワンよりオンリーワン、みんなちがってみんないい。聞き飽きたフレーズだが、実践するのは難しい。それを実践できている圭の「普通」さは、なるほどあきの「魔法」やウサの「理屈」に比肩する個性なのかも知れない。

今巻で一番衝撃的だったのは、交通事故に遭って以来昏睡状態が続いているウサの弟の話を聞いたあきが、魔法で彼の目を覚まそうとウサに提案するシーン。魔法の力で目覚めた弟の笑顔は本当の笑顔じゃないと、今まで親しみやすい「魔法少女」という呼称を用いていたウサが初めてあきを「魔法使い」――人間と異なる種族――と呼ぶ。鬼のような形相をするでもなく、大声を張り上げるでもなく言い放ったその言葉が、重く、哀しい。

このシーン、最初に読んだときは違和感があった。あれだけ魔法で人の心を操ることを恐れていたのに、その提案は軽率だと思わなかったんだろうか、と。ただ、あきは思わなかったんだろうなというのも理解できる。魔法で風船を取ってあげた子供が喜んだように、魔法で弟の目を覚ませばウサは喜ぶと思ったんだろうな、と。ウサにとっての弟が、風船とは比べ物にならないくらい大切な存在だとも知らずに。その浅慮さが、単にウサとの付き合いの短さからくるものならいいが、あきが長らく他者との関わりを避けてきたことからくるものだとすれば、これから先の展開に影響してくるかも知れない。