「生徒会のヒメゴト」(みなづき忍) こがね・由利編

白百合高校の生徒会長である長谷部麗夢は、容姿端麗で成績優秀、他の生徒たちからも尊敬されている完璧超人。しかしその正体は、可愛い女の子が大好きな変態淑女だった。そんな麗夢に振り回される生徒会メンバーや、彼女たちのクラスメイトも巻き込んで繰り広げられる、賑やかだけど少しほろ苦い青春コメディ。

去年の7月には読み終わっていたのに今日まで感想を書けなかったのは、この作品が好きすぎて書きたいことをうまくまとめられなかったからだ。もちろん、自分の文章力が足りないせいでもあるが。なので、1つの記事にまとめるのは諦めて、2回に分けて書くことにしたい。今回は、生徒会会計の計屋こがねと、麗夢を慕う一年生の河合由利について。

白百合高校に入学したこがねは、新入生歓迎会で麗夢が行ったスピーチに感動し、自分も生徒会に入りたいと考えていた。ある日、こがねは廊下で何かを話している麗夢と副会長の冴を見かけ、そこで麗夢の本性を知ってしまう。話を聞いていたことを麗夢たちに気付かれてしまったのが運の尽き。半ば口封じとして、望んでか望まずかこがねは生徒会に入ることになる。

私はてっきり、こがねが麗夢の後を継いで次の生徒会長になると思っていた。生徒会書記の萌子は、みなづき忍さんの作品ではおなじみの「電波キャラ」で、とても生徒会長になるようなキャラではない。こがねのクラスメイトで麗夢の妹である理子は、最終的には副会長になるが、妹キャラが染みついているせいか生徒会長としては頼りない印象がある。一方こがねは、暴走気味なキャラが多いこの作品では貴重なツッコミ要員で、中学時代にも会計を務めていたため生徒会の経験も豊富。更には先代会長の妃華とも意気投合しており、頻繁に連絡を取り合って彼女から帝王学(?)を授けられている。麗夢の一つ下の世代では、こがねが最も生徒会長の素質があるだろう。

一つ下というのがミソで。実際に次の生徒会長に就任したのは二つ下の、麗夢に憧れて事あるごとに生徒会室に入り浸るようになった河合由利だった。ぶりっ子のようでどこか計算高さもある由利の登場は、生徒会メンバー全員が続投して新鮮さがなくなりかけていた作品の良い刺激になったが、彼女もまた生徒会長向きのキャラではないように見えた。事実、由利自身も会長よりは副会長になりたいと述べている。

そうした予想が大きく外れているのに気付いたのが、学園祭のある一コマを描いた「彼女のシンジツ」の話。実行委員として校内を巡回していた由利は、同時に起きた複数のトラブルに対応できず混乱している実行委員長たちを発見する。見かねた由利は、ぶりっ子の皮を脱ぎ捨ててその本性――長女気質のリーダーシップを発揮するが、その仕切りっぷりが鮮やかだった。憧れの人である麗夢や、OGである妃華たちをも利用し、適材適所に人員を配置して彼女たちにトラブルを解決させる。つまり由利自身は手を動かしていないのだが、それこそリーダーのあるべき姿だろう。どんなに優秀でも、自分だけでできる仕事の量には限りがある。であれば、誰が何をできるのかを知っておき、その人たちを動かして仕事をしてもらう方が効率的だ。それを実践した由利に、現会長の麗夢と先代会長の妃華が向けた視線、そしてこがねも由利に指示される側に回ったのを見たとき、次の生徒会長はこがねでなく由利なんだなと確信した。

現実には難しいことでも、フィクションの世界なら簡単に実現できる。そうしたフィクションが現実よりも苦手とするものに、「世代交代」がある。先代のキャラが魅力的であればあるほど、後を継いだキャラに物足りなさを感じてしまう。その点で、「生徒会のヒメゴト」は世代交代に成功していた。新会長の由利と、会長の座こそ譲ったが実質的な運営を麗夢に任されたこがね。この2人が揃った新しい生徒会なら、きっと妃華や麗夢の代を超えられるだろうという説得力がある。だからこそ、読み終わって1年以上が経った今でもこの作品は色あせることがなく、こうして想いを綴ることができるのだ。