『こみっくがーるず』のかおすは、はんざわかおりさんなのか?

 タイトルがひらがなばかりで読みにくい…。

 それはさておき。『こみっくがーるず』アニメ化である。
まんがタイムきららMAX」で2014年5月号から掲載されているこの作品は、2017年8月号でアニメ化が発表された。
 アニメの公式サイトは開設されているものの、まだトップページだけでめぼしい情報はない。
 ただ、6月25日に開催されたイベント「まんがタイムきららフェスタ2017」でPVが先行公開されたという。この出来がかなり良かったらしい。早く観たい…。

 私が『こみっくがーるず』を好きになったのは、恥ずかしながらアニメ化が発表されてから。正確には、その後に単行本の3巻を読んでからだ。
 それまでも、もちろん面白い作品とは思っていたが、個性的な作品が多いきららMAXの中では良くも悪くも普通の作品という位置づけだった。
 3巻は、そんな私のイメージを大きく変える内容だった。キャラクターが可愛いだけの作品ではなく、まんが家という職業の難しさ、そしてやりがいを丁寧に描いている作品だと気づいた。
 アニメ化によって、この作品の魅力がより多くの人に届くのであれば、こんなに嬉しいことはない。

 

 

ここからが本題

こみっくがーるず』を好きになればなるほど、気になってきたことがある。
 この作品は、作者のはんざわかおりさんの実体験が元ネタになっているのか? 主人公のかおすは、はんざわかおりさん自身がモデルなのか? ということだ。
 私は普段、作品の内容と、作者本人の性格は切り離して考えている。たとえTwitterで人格を疑うような発言をしていたとしても、作品が面白ければ気にしない(というより、そういう人のツイートは見ない)。逆も然り。
 しかし、作品のテーマが「まんが」である場合は話は別だ。むしろ、切り離す方が不自然とさえ思う。

 はんざわかおりさんのブログ「かおりん生存確認」の記事はひと通りチェックしたものの、仕事の宣伝がメインで、作者の私生活についてはあまり書かれていなかった。
 Twitterでは書いている可能性もあるが、今から過去のツイートをさかのぼるのは難しい。

 そこで思いついたのが、はんざわかおりさんの過去作品を読むことだった。
 ご存知の方も多いと思うが、作者は過去に「りぼん」で『いちごオムレツ』という4コマまんがを連載していた。
 直接は描かれていなかったとしても、作品の内容に『こみっくがーるず』につながるヒントがあるかも知れない。

 早速、Amazonで『いちごオムレツ』全4巻をまとめて注文。
 残念ながら、すでに新刊の在庫は切れてしまっていたため、すべてマーケットプレイスの中古品だ。
 はんざわかおりさん、ごめんなさい。代わりに、『こみっくがーるず』はこれからもずっと応援させていただきます。

 

事実はまんがより奇なり

 私は男だが、年子の姉が小学生時代に「りぼん」や「なかよし」を購読していたので、当時は一緒に読ませてもらっていた。
 さすがにラブコメものは気恥ずかしいということもあり、ストーリー作品は『赤ずきんチャチャ』や『こどものおもちゃ』くらいしか読んでいなかったと思う。
 一方、ショートギャグ作品は毎月欠かさず読んでいた。『へそで茶をわかす』や『めだかの学校』は、今でもよく覚えている。

 はんざわかおりさん(当時は本名の「半澤香織」名義)の『いちごオムレツ』も、そんなショートギャグ作品のひとつだ。
 ただし、掲載が始まったのは2000年であるため、ちょうど姉が「りぼん」を卒業したころと重なる。『こみっくがーるず』を読んだとき、作者の名前に聞き覚えがなかったのも仕方ない。

『いちごオムレツ』の第1話を描いたとき、はんざわかおりさんは中学3年生だったという。
 だから、と言うのは失礼だが、初期の話は良くも悪くも荒々しい。
 しかし、2巻で作中のキャラクターが高校に進学したあたりからは、絵もギャグもだいぶ洗練されていく。
 この記事を書くための資料としてざっと読むつもりでいたが、1週間かけてじっくり読んでしまった。
こみっくがーるず』には女性キャラしかいないので、男性キャラが多く登場すること、というより作者が男性キャラも魅力的に描ける人だと分かったのは新しい発見だった。
 特に、男の娘キャラのユイは個人的にかなり好み。『こみっくがーるず』にもこういうキャラが出てこないだろうか…。

 そして、本編以上に興味深かったのは、各ページの上部に「おまけページ」が掲載されていること。
花とゆめ」コミックスにも、作者の近況などが描かれている縦1/4のスペースがあるが、それと似たようなものだろう。
 そこには、はんざわかおりさんのプライベートなエピソードも数多く描かれていた。
 当時は中学生〜大学生だったということもあり、内容は結構生々しい。
 その一部を、『こみっくがーるず』のコマを引用する形で紹介させていただきたい。

 

大学時代、寮に住んでいた


引用:『こみっくがーるず』1巻35ページ

 作者いわく、「寮ではないんだけどまぁだいたい寮みたいなトコ」。おそらくは一人部屋で、掃除当番などがあったという。
 私も少し誤解していたが、『こみっくがーるず』でかおすが住んでいる寮は学生寮ではなく、出版社の「文芳社」が経営する「女子まんが家寮」だ。
 かおすたちのような女子高生も多く入寮しているものの、中には成人していると思われる寮生もいる。実際は社員寮に近い性質なのだろう。

 寮を引っ越す際、はんざわかおりさんはおまけページで「いつか寮まんがかきたい」とつぶやいている。
 まさに、その目標を叶えたわけだ。

 

福島県出身


引用:『こみっくがーるず』3巻72ページ

こみっくがーるず』のかおすは福島県出身。青森県出身のフーラ先輩とは、東北の雪国トークで盛り上がる仲である。
 そして、Wikipediaにも書かれているように、はんざわかおりさんも福島県出身だ。大学進学を機に、東京都に引っ越したという。
 荒井チェリーさんといい、福島県には才能ある4コマまんが家を生み出す風土があるのだろうか?(この2人だけと言ってはいけない

 

バレーボールの経験者


引用:『こみっくがーるず』2巻76ページ

 はんざわかおりさんは、小学校から中学校までバレーボール部に所属していた。
 中学3年生のときには、海外の試合での日本選抜チームにも選出されたという。まさに文武両道である。
 かおすには直接関係しないが、『こみっくがーるず』でも、少年まんが家の翼がスポーツものの読み切りを描くためにバレー部に体験入部するエピソードが存在する。

 作者の身長は中学2年生の時点で168cmあり、しかしそこで成長が止まってしまったらしい。
 高校ではバレーボール部に入らなかったことと関係するのかは分からないが、もし作者の身長が伸び続けていたら、『こみっくがーるず』は生まれなかったかも知れない。

 

「あばばば」が口癖


引用:『こみっくがーるず』1巻73ページ

 かおすの代名詞ともいえる、「あばばば」。
こみっくがーるず』2巻の著者近影で、はんざわかおりさんは「最近主人公の叫び声がうつりました」と書いているが、『いちごオムレツ』を読む限り昔からの口癖であるようだ。
 おまけページを見た初対面の相手からも、「ほんとにあばばばあばばば言うんだね!」と言われてしまうとのこと。

 ただ、私も似たようなことを言ってしまうときがあるので、作者の気持ちは少し分かる。
 緊張していて、しかしきちんとコミュニケーションを取ろうと思うからこそ、うまく言葉が出ずに「あばばば」と口走ってしまうのだ。
 もし、話している相手が突然「あばばば」と言い出したとしても、笑わずに優しく次の言葉を待っていただきたい。

 

猫が好き


引用:『こみっくがーるず』2巻42ページ

 私の勝手なイメージだが、まんが家には猫が好きな人が多いような気がする。
 生活が不規則になりやすい職業で、毎日の散歩が必要な犬よりも飼いやすいからだろうか。
 多分に漏れず、はんざわかおりさんも猫好きだ。
 『いちごオムレツ』には、猫をこよなく愛する猫瀬川宰(おさむ)というキャラクターが登場する。
 また、おまけページでも実家で飼っている猫の話題が度々描かれていた。

こみっくがーるず』にも、人間のキャラクターに負けず劣らず特徴的な猫が登場する。
 大きい犬に驚いて「にゃばばば」していたら仲間たちとはぐれてしまったという、かおすを彷彿とさせるような猫、その名も「にゃおす」。
 福島の実家では猫に囲まれた生活を送っていて、猫とのふれあいに飢えていたかおすは、にゃおすを寮に連れて帰る。
 実家には大勢の猫がいるものの、都会暮らしでなかなか猫と接する機会が少ない、作者の心情を反映したエピソードなのかも知れない。

 

相撲も好き?


引用:『こみっくがーるず』3巻103ページ ※四股を踏んでいる…らしい

『いちごオムレツ』が8年間の長期連載を終える直前、約6話にわたってパラレルシリーズが展開される。
 主人公の女子高生・有紗が、魔法のステッキを使って力士に変身してしまうという内容だ。
 今でこそ「くだらないなぁ」のほめ言葉で済ませるが、当時「りぼん」を読んでいた小学生女子はどう思ったのだろうか…(案の定、賛否両論だったらしい)。

こみっくがーるず』にも1コマだけ、まんがを描く気合を入れるためにかおすが四股を踏むシーンがある。
 書いておいて、さすがにこじつけでは…と自分でも思うが、好きでなければ違う作品で二度も相撲ネタは描かないだろう。

 

母親に「先生」と呼ばれる


引用:『こみっくがーるず』2巻114ページ

 はんざわかおりさんは、母親に「キャオリン先生」と呼ばれていたという。
 さすがにメールや電話でのみと思われるが、お茶目なお母さんである。
こみっくがーるず』のかおすも、母親のはる子に「かおす先生」と呼ばれている。
 かおすのモデルが作者自身だとすれば、はる子のモデルは間違いなく作者の母親だろう。

 まんがを描いていることを、家族や親戚に隠しているまんが家も多いと聞く。
 単に自分の作品を読まれるのが恥ずかしいだけなのか。それとも、まんが家という不安定な職業に対する偏見を恐れてなのか…。
 そうした意味で、作者はとても恵まれている。
 高校受験や大学受験という、その人の人生で最も大事なイベントを経てもまんがを描き続けられたのは、本人の努力もさることながら、親の理解があったからに他ならない。
 もちろん作者もそんなことは分かりきっていて、支えてくれた親や家族に感謝しているはずだ。

 娘の執筆活動を心から応援しているかおすの母親と対比させるように、『こみっくがーるず』3巻には翼の母親が登場する。
 翼の母親は、娘がまんが家になるのを良しとせず、大学卒業後には家業を継がせようとしている。
 子どもの将来を案じる親と、自分の夢を親に認めてもらいたい子ども。親の存在があまり描かれないきらら作品において、3巻の展開は異色である。
 何も、まんが家に限った話ではない。子どもが夢に向かってがんばっているのであれば、親はそれを応援してほしいという、作者からのメッセージなのかも知れない。

 

まんがを描き続けた


引用:『こみっくがーるず』3巻33ページ

 これこそ、かおすがはんざわかおりさんをモデルにしたキャラクターだと思う一番の理由であり、私が作者を尊敬している理由でもある。
 中学3年生から8年間、三大少女漫画雑誌と呼ばれる「りぼん」で連載を続けた。
 1話あたりのページ数が少ないとはいえ、作者が同業者も羨むような輝かしい経歴を持っているのは確かだ。
 しかし、きららMAXで『こみっくがーるず』の連載が始まったこと、『こみっくがーるず』がアニメ化したことは、決してその経歴に頼ったものではない。

『いちごオムレツ』完結後に『キルミンずぅ』のコミカライズ作品を描いてから、『こみっくがーるず』の連載が始まるまで、3年近くの空白期間がある。
 その間、作者が何をしていたのかは分からない。『いちごオムレツ』連載当時から運営しているはずのブログも、2013年12月からの記事しか公開されていない。また、2015年4月29日の記事では、しばらく漫画を描けていない時期があったと述懐している。
 それでも、作者はまんがを描くのをやめなかった。
 まんが家として一度は成功した人が、きららへの持ち込みを続け、アンソロジーコミックで作品を描くようになり、『こみっくがーるず』の連載を始める。
 それは紛れもなく、作者がゼロからつかみ取ったものだ。

 そして、『こみっくがーるず』のかおすもまた、ひたすら漫画を描き続けたキャラクターだ。
 女子まんが家寮で冬に毎年開催される、ボツネームを燃やして焼きいもを作る親睦会で、かおすは大量のボツネームを持参する。同業者の寮生たちでさえ驚くほどの枚数だ。
 はっきり言って、かおすにはまんが家の才能がない。連載はおろか、読み切りさえ雑誌に載ったことがほとんどない。つまり、これらのボツネームは完成形が世の中に出ていない、正真正銘のゴミである。
 だが、たとえ誰にも読まれないものだとしても、かおすは手を抜かずにまんがを描き続けた。その結果、3巻の終盤ではついに連続ゲストを掲載にするに至っている。
 まるで、作者が『こみっくがーるず』の連続ゲストを始めたころのように。

 まんが家にとって、自分の作品がアニメ化されるのは最高の栄誉の一つだ。
 多くの人が自分の作品を面白いと感じているということであり、さらに多くの人に自分の作品を知ってもらえるきっかけにもなる。
 しかし、アニメ化はゴールではない。はんざわかおりさんは、これからも変わらずにまんがを描き続けるだろう。
 かおすと同様に、まんがを描き続けることが、作者の生きている証なのだ。