こんにちは。「まっしろライター」のましろ(@mashirog)です。
「4コマオブザイヤー」が、今年も開催されています。
毎年参加させていただいている企画で、今年もさっそく投票してきました。
企画の運営には関わっていませんが、今回は「4コマオブザイヤー」についての説明と、私が投票したマンガの紹介をしたいと思います。
オブザイヤーというくらいなので、これらの作品が私が考える2017年のベスト4コマ漫画です。異論は認める(何)。
また、レギュレーションの関係で泣く泣く投票できなかった作品についても、あわせて語らせてください。
4コマオブザイヤーとは?
「4コマオブザイヤー」は、2010年から行われている有志企画で、今年で8回目の開催になります。
「このマンガがすごい!」の4コマ版と考えてもらえれば分かりやすいかと。
そもそも、「このマンガがすごい!」などでは4コマが取り上げられることが少ないから、というのも開催理由のひとつのようです。
参加者は、2010年の1回目は20人ほどでしたが、昨年は500人超と、4コマファンの一大イベントに成長した感があります。
投票は1作品からでも可能なので、普段あまり4コマを読まないという方も参加してみてはいかがでしょうか?
1年をふりかえってみれば、1冊くらいは4コマを読んでいるんじゃないかと思います。
※レギュレーション
【新刊部門】
2016年12月1日以降から2017年11月30日までに発売された”1巻の”4コマ漫画単行本から5作品
【既刊部門】
2016年12月1日以降から2017年11月30日までに発売された”2巻以降”の4コマ漫画単行本から5作品
【投票期間】
2017年12月1日~2017年12月18日
【投票対象作品リスト】
4コマオブザイヤー2017投票対象作品リスト
新刊部門の投票作品(5作品)
『おおきなのっぽの、』(柴)
『おおきなのっぽの、』身長170cmの小学生4年生・古戸蛍。体の成長に心が追いつかないことにとまどいながらも、家族や友達との日々を過ごしています。「これ以上大きくなりたくない」と蛍は言うけれど、誰に対しても時間は平等に進んでいく。『白衣さんとロボ』然り、2017年は柴さんの年でした。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
「月刊少年シリウス」で2016年3月号~2017年9月号まで連載。
単行本は全2巻で、1・2巻ともに今年発売されました。
連載ストックとしては2巻+αなのですが、2巻が分厚くなっていて、雑誌に掲載された話はすべて単行本にも収録されています。
連載が終わってしまったこと自体は残念であるものの、こうした配慮はありがたいです。
表紙イラストからも分かる通り、小学4年生にして身長170cmという蛍の背の高さがまず目を引きます。
一方、中身は小学生そのもの。むしろ、成績は中の下、運動神経もあまりよくないなど、他のクラスメイトより子供っぽいところすらある。
この作品も、基本的には蛍の外見と内面のギャップをネタにしたギャグ4コマです。
しかし、「デカ女」みたいに蛍がからかわれるシーンは一切なく、周りの人たちが彼女の大きさを個性と捉えている優しさが作品全体から伝わってきます。
引用:『おおきなのっぽの、』1巻4ページ
特に顕著なのが、このシーン。
少しデリカシーに欠けるとはいえ、男子ふたりとも親切心で言っているんですよね。お腹減ったら嫌でしょ?って。
同じく今年発売された柴さんの新刊『白衣さんとロボ』も秀作ですが、柴さんの人柄や価値観などが感じられるこの作品に投票しました。
『どうして私が美術科に!?』(相崎うたう)
『どうして私が美術科に!?』願書の出し間違いで美術科に入学してしまった桃音を始め、何らかの理由で美術科になじめない女子高生たちの居残り生活を描いた作品。絵の才能のなさや、自身の将来に悩むこともあるけれど、仲間と一緒に前に進もうとする桃音たちの姿が尊い。もう一回言います。尊い。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
毎年、4コマオブザイヤーに投票する作品を選ぶときに悩むのが、「きらら枠」を何にするかです。
一番多く読んでいるのがきらら系の4コマなので、「新刊部門、既刊部門ともに1作品ずつ(ただし「ミラク枠」は別)」と縛りをつけないと、全部きららで埋まってしまうんですよね…。
その中で、今年はこの作品。「まんがタイムきららMAX」で2016年3月号から連載中。単行本は現在1巻が発売されています。
絵の可愛さもさることながら、相崎うたうさんは「表情」を描くのが上手なマンガ家さんだと思います。
笑っている顔、泣いている顔、辛そうな顔、どれもリアリティがあって、キャラの感情が伝わってくる。
特に、主人公の桃音は表情豊かなキャラなので、画風とよくマッチしています。
引用:『どうして私が美術科に!?』1巻55ページ
その桃音を差し置いて、私が一番好きなキャラは蒼(あおい)です。画像の真ん中にいる子。
いわゆるおバカ枠ですが、とにかく純粋で、こんな子が友達だったら学校生活も楽しいだろうな…と思ってしまう。
他のキャラにもそれぞれ魅力があり、読めば必ず1人は推しキャラが見つかる、そんな作品です。
『ななつ神オンリー!』(うちのまいこ)
『ななつ神オンリー!』人間の信仰心が薄れた現代。最高神アマテラスの秘策は、七福神を美少女アイドルグループにすることでした。神話の小ネタを挟みつつ、メンバー間の対立を乗り越えてトップアイドルを目指す青春サクセスストーリーにもなっているところがお見事。まさに神7。まさに神4コマ。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
前述の通り、「まんがタイムきららミラク」の作品は、「きらら枠」とは別に「ミラク枠」として4コマオブザイヤーに投票してきました。
それくらい、ミラクには私好みの作品がたくさんあったのですが、残念ながら今年で休刊に…。
最後の「ミラク枠」はこの作品。2016年10月号から、休刊する2017年12月号まで連載。単行本は(事実上)全1巻。
1巻の発売後も雑誌に掲載されていた6話ぶんが宙に浮いた状態になっているため、どんな形でもいいのでまたお目にかかりたいです。
七福神がアイドル、その中で一番地味な布袋が主人公という設定が絶妙です。
メンバーの中には、アイドル活動に積極的な神様もいれば、「神様が人間に媚びる必要はない」と乗り気でない神様もいます。
そんなメンバーたちを、七福神で唯一の元・人間である布袋がうまく取り持って、ひとつのグループにまとめていく。
日本神話や七福神の知識があるならもちろん、あまり知らなくても純粋にアイドルマンガとして楽しめる作品です。
引用:『ななつ神オンリー!』1巻18ページ
それにしても、「布教」「信者」という言葉が使われるくらい、神様とアイドルの組み合わせは抜群。
どうしてこんなマンガが今までなかったんだろう。自分が知らないだけで、実はもうあるんでしょうか?
『お稲荷JKたまもちゃん!』(ユウキレイ)
『お稲荷JKたまもちゃん!』京都から転校してきたのは、伏見稲荷大社の狛狐・たまも。本人は人間に化けているつもりですがバレバレで、クラスメイトたちが気づかないフリをしてくれてます。そんなクラスメイトたちの優しさと、些細なことにも目を輝かせるたまもの純真さにほっこりする作品です。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
「月刊ComicREX」で2017年3月号から連載中。単行本は1巻まで発売されています。
元々は、作者のユウキレイさんがTwitterに投稿したイラストで、そこからマンガ→同人誌→ComicRexで連載→単行本発売とステップアップしていきました。
学校生活に憧れて女子高生に化けるも、術が未熟で化けられていないことに気がついていない伏見稲荷のおキツネさま(´・ω・`)周りの同級生も気を使って気付いてないフリをしてくれてる(´・ω・`)ネームの息抜きに落書き pic.twitter.com/rf8HBoKGHn
— ユウキレイ2巻5月26日発売 (@YuukiRay) 2016年2月16日
たぶん、このツイートが最初でしょうか? 違ったらすみません…。
引用:『お稲荷JKたまもちゃん』1巻73ページ
人間に変装できていない(一応、大人には人間に見えている)のを知らずに学校生活を謳歌しているたまもと、気づかないフリをしてあげるのに必死なクラスメイトたちの対比が面白い作品です。
どうしてクラスメイトたちがこんなに親切なのかというと、たまもが良い子すぎるから。
彼女は、とにかく褒めてくれます。相手が男子でも、ギャルでも、マネキンでも、良いところを見つけてひたすら褒めます。ベタ褒めです。
そんな子が、もし正体がバレたら神罰を受けてしまうのだから、気づかないフリもするというものでしょう。
『新婚のいろはさん』(OYSTER)
『新婚のいろはさん』彩葉さんと始くんの、アツアツ新婚生活。家電を買う。ドライブをする。ありふれた夫婦の日常が、OYSTERさんの手にかかると最高のギャグ4コマ、最高のラブコメ4コマになる。帯のコピー、「こんな嫁がほしい」とかでなく「こんな夫婦になりたい」なのが素敵だなと思いました。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
「まんがタウン」で2016年9月号から連載中。単行本は現在1巻が発売されています。
画力、構成力、ギャグのセンスと、4コマを描かせたら日本一と言っても過言ではないOYSTERさんの作品は、過去にも何度か4コマオブザイヤーに投票してきました。
2012年は『男爵校長High!』、2013年は『光の大社員』。そして今年はこれ。
過去作品では、日常の中にSF要素が散りばめられていることが多かったのですが、この作品では新婚夫婦の生活が淡々と(もちろんOYSTERさん独特のギャグを織り交ぜつつ)綴られています。
引用:『新婚のいろはさん』1巻13ページ
OYSTERさんの作品は、ギャグが面白いのはもちろんなのですが、なんといっても「女の子が可愛い」んですよね。
特にこの彩葉さん。黒髪、ツリ目、貧乳と、私の好きな属性がすべて詰まっている。
投票コメントで、安易に「こんな嫁がほしい」と言わないのが良いと書いたものの、やっぱりこんな奥さんが欲しい…。
既刊部門の投票作品(3作品)
『神様生徒会部!』2巻(未影)
『神様生徒会部!』(2) 人々の支持を得て神格を取り戻すため、天津テラス(天照大神)は生徒会選挙に立候補する。日本神話の女神も男神もまとめて女体化(?)してしまう大胆さは、きららで長く活躍する未影さんならでは。ラストシーンでは、現代における神様と人間の関わり方を考えさせられました。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
「まんがタイムきららMAX」で2014年9月号~2017年1月号まで連載。単行本は全2巻。
未影さんは、以前にも『イチロー!』や『ホイップノート』といった作品を連載していて、『きんいろモザイク』や『ご注文はうさぎですか?』が出てくるまできららグループの中ではマイナー気味だったMAXを長年にわたり支えてきた方です。
この作品も、「女の子が可愛い」という未影さんの長所をそのままに、含みのあるラストシーンなど過去作品とは違う領域に挑戦している意欲作でした。
投票コメントの通り、この作品では日本神話上の設定にかかわらず、すべての神様が女性として描かれています。
オモイカネはプロット段階では男でしたが、担当さんの「みんな女の子がいいな」の一言により女の子になったとのこと。担当さんGJ。
引用:『神様生徒会部!』2巻50ページ
アマテラスの弟であるスサノオも、須佐乃オトメ(すさの・おとめ)という女教師役で登場しています。
ただ、神様の立場的には男神のままであるため、ややこしいことに…(スセリヒメは、スサノオの娘と伝えられている神様です)。
考えるな、感じろ。
『さくらマイマイ』2巻(おしおしお)
『さくらマイマイ』(2) 箱入りお嬢様の櫻子が、手違いで普通高の寮に入ったところから始まる、ほんのり百合風味な日常コメディ。と、1巻までは思っていました。2巻で生徒会メンバーが加入してから、ギャグもキャラも一気にカオスに。あんなに可愛かった瑠璃がヤンデレになるなんて…。でも好き。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
4コマオブザイヤーの既刊部門には、新刊部門と同様に5作品まで投票できますが、私は例年3作品しか投票していません。
個人的に決めている投票基準が「前の巻よりも面白いこと」なので、どうしても数が絞られてしまうんですよね。
『ひだまりスケッチ』とか『ゆゆ式』とか、高いレベルで安定している作品も当然好きですけど、それ選んでも面白くないでしょ? と思っているので…。
そういう意味で、今年の既刊部門No.1はこの作品。
「コミックキューン」で2014年10月号から連載中。単行本は現在2巻まで発売されていて、2016年にはドラマCDもリリースされました。
1巻はキューンらしく「かわいい」が存分に楽しめる作品だったのに、2巻になってから暴言あり、首吊りありと、ぶっ飛んだギャグが多くなります。
作者のおしおしおさんがきららで連載していた『神様とクインテット』がこういう作品だったので、むしろこれが本来の作風なのではないでしょうか。
引用:『さくらマイマイ』2巻41ページ
中でもキャラ崩壊の激しいのが、主人公・櫻子の親友である瑠璃。
こんな無垢な笑顔を振りまく女の子だったのに…。
引用:『さくらマイマイ』2巻85ページ
こうなるんですからね。
もちろん、常にヤンデレなわけではありませんが、ゾクゾクします。
『すずなの恋』3巻(あづま笙子)
『すずなの恋』(3) 男の子が苦手なすずなと、そんな彼女が気になる涼城の甘酸っぱいラブコメディ。友達同士が付き合い始めたのをきっかけに、ふたりの関係は加速する。男子小学生と女子高生など、風変わりなラブコメを描いてきたあづま笙子さんが”あえて”捻らないラブコメに挑戦した作品でした。 #4oty
— ましろ@ライター (@mashirog) 2017年12月1日
「まんがライフ」で2014年10月号~2017年10月号まで連載。
単行本は全3巻。今年、2巻と3巻が発売されています。
作者のあづま笙子さんは、男子小学生と女子高生の『かてきょん』、吸血鬼と人間の女性の『吸血鬼にっき』など、ラブコメ4コマを精力的に発表してきました。
この作品は高校生男女のペアなので、設定こそオーソドックスですが、そのぶん作者がこれまでに培ってきたラブコメマンガの技術が凝縮されている作品になっています。
もちろん単独でも楽しめますが、過去作品もあわせて読むと、この作品のムダのなさ、ラブコメマンガとしての純度の高さを感じられると思います。
引用:『すずなの恋』3巻50ページ
3巻で特にお気に入りなのはこのシーン。
男子と接するときはいつもビクビクしていたすずなが、涼城に対してだけとはいえこんな態度を取れるようになったんだな…と感慨深い。
単行本の表紙イラストもそう。1巻では警戒しているような表情だったのが、2巻では微笑みに、そして3巻では満面の笑みを浮かべていて、すずなの成長が実感できます。
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投票しなかったけどオススメのマンガ(12作品)
『TCGirls』(もみのさと)
とある電気街のカードショップ「Aster」で展開される、女の子の決闘者(デュエリスト)たちのドタバタコメディ。
レアカードの価格変動など、TCGを題材にしたネタが多く、TCGのプレイ経験がある方なら「あるある」と共感してしまうのではないでしょうか。
また、コアなTCGネタだけでなく、主人公のアンが「ひとりでは遊べない」カードゲームを通じて交友関係を広げていく日常4コマとしても秀逸。
新刊部門に投票した『どうして私が美術科に!?』とともに、きららMAXの次世代を担う作品です。
『黒髪巫女とマリアウィッチ』(内藤隆)
魔法使いに憧れる純和風少女・頼子が住む街にやってきたのは、魔法使い見習いのマリア。彼女もまた日本文化が大好きで、ふたりはすぐ友達になる。
海水浴、ハロウィン、クリスマス、お正月など、季節のイベントを全力で楽しむ頼子たちを見ていると、思わず頬が緩んでしまいます。
しかし、作者の内藤隆さんの病気療養に伴い、「まんがタイムきららキャラット」2017年10月号をもって連載が終了…。
作者の健康を第一に考えつつ、いつか復帰していただける日を待ちたいと思います。
『広がる地図とホウキ星』(描く調子)
一人前の魔法使いになるため、首都の魔法学校で勉学に励む少女・リンたちの生活を描いたファンタジー4コマ。
リンたちが知恵をふりしぼり、「クエスト」と呼ばれる学校の課題や街のトラブルを解決していくさまは、爽快の一言。
街の人々も魔法・魔法使いの存在に好意的で、読んでいて明るい気持ちになれるファンタジーマンガです。
単行本1巻に収録されているのは10話まで。ミラクの休刊により、11話以降は「きららベース」に再掲されています。
『ざしきわらしと僕』(西岡さち)
両親の離婚により、田舎の祖母の家に住むことになった少年・裕貴。
そうした家庭環境もあって、自己主張の少ない性格だった彼ですが、座敷童子の「ざわ子」や田舎の人たちの優しさに触れ、次第に心の氷を解かしていきます。
川で水遊びをしたり、山肌をダンボールのソリで滑ったり、古き良き日本の子どもの日常がこの作品には残っています。
…という魅力ももちろんあるのですが、裕貴が幼馴染やクラスメイト(男の子含む)にやたらとモテる。裕貴爆発しろ。
『美軍師張良』(秦和生)
劉邦の軍師として有名な張良を主人公にした、中国歴史4コマ。
ギャグ4コマの体裁を取りつつ、秦打倒に燃える張良の生涯を描いた大河作品として成立させる作者の力量に感服します。1巻は、博浪沙での始皇帝暗殺に失敗して身を隠すところまで。
女性のようだったと伝えられている容姿もネタになっていて、主題ではないものの、そこはかとなくBLっぽい描写も見え隠れします。
「マッチョに巨大ハンマーを投げさせて圧殺する」という荒唐無稽な暗殺方法が、この作品のフィクションでなく本当だったこともすごい。史実はマンガより奇なり。
『北斎のむすめ。』(松阪)
主人公は、葛飾北斎の娘で、「日本のレンブラント」とも評される浮世絵師・お栄(葛飾応為)。
彼女の人物像について記された資料は少ないため、お栄たち絵師の名前や作品を除くと、作中のネタのほとんどはフィクションであると思われます。
が、父親譲りの画才と、先輩の絵師たちにも食ってかかる気風の良い性格は、おそらく実在したお栄そのものでしょう。
彼女を語る上で欠かせない「吉原」の遊女たちも、重要な役どころで登場。男社会の江戸で、信念を持って生きる女性の姿が活き活きと描かれています。
『白衣さんとロボ』(柴)
天才女子高生科学者の「白衣さん」と、彼女が作った「ロボ」の奇妙な同居生活。
ふたりが住んでいる家は木造の平屋建て、ロボのデザインも高性能な割に前時代的など、どこかレトロな雰囲気が漂います。
登場人物は実質このふたりだけですが、白衣さんとロボの上下関係がネタによってくるくると変わり、読む人を飽きさせません。
一方で、キャラクターが多い『おおきなのっぽの、』のような群像劇も描ける。柴さんは、来年以降も引き続き応援していきたい作家さんです。
『思春期コーヒードリップ』(裕木ひこ)
男子高校生の一哉(いちや)は、純喫茶「止まり木珈琲店」のマスター。バリスタとしての腕前は一流ですが、少し自信過剰なところも…。
しかし、コーヒーの味が苦手なクラスメイトのひなみを満足させることができず、自分が常連客に甘やかされていたことに気づきます。
タイトルの通り、一哉とひなみが子どもから大人へと成長していく様子が、「コーヒー」というテーマを通して描かれています。
コーヒーが苦手なのにブラックを飲んでみたいというひなみには、個人的に共感してしまいました。私も初めてブラックコーヒーを飲んだとき、大人の仲間入りをしたような気分になったので(気分だけ)。
『ぴっぴら帳』(こうの史代)
大衆食堂で働くキミ子ちゃんと、セキセイインコ「ぴっぴらさん」の日常。
「宝物のような毎日は突然ひょいと訪れたりします」というプロローグから始まる通り、迷子のぴっぴらさんを拾ったことをきっかけに、キミ子ちゃんは多くの人に出会い、幸せな日々を過ごします。
1997年~2004年に連載されていた作品ですが、新装版の単行本が発売されたのは今年なので、まぎれもなく4コマオブザイヤーの対象です。
劇場アニメ化もされた『この世界の片隅に』の作者でもある、こうの史代さんの初期の代表作。この機会に読まれてみてはいかがでしょうか。
『概念』(さんかくやま)
ストーリーがないのはおろか、登場人物の名前さえも定かでない(一応設定はある)、とにかくシュールなギャグ4コマ。
「四角の枠線がある」「上から順に読む」といった4コマのお約束を逆手に取ったネタが多く、まさに「4コマの枠にはまらない4コマ」といえるでしょう。
『GA-芸術科アートデザインクラス-』や『たらちねパラドクス』でも似たような手法が取られたことはあるものの、ここまで徹底した作品は初めてだと思います。
例えばこのネタ。…と画像を引用したいところですが、一部分だけ抜き出すと逆効果になる気もするのでやめておきます。ぜひ単行本で読んでみてください。
『ネコノヒー』(キューライス)
ちょっと太めの猫「ネコノヒー」が、料理や運動など色々なことに挑戦するあるある4コマ。
失敗したときの哀愁漂う表情と、たまに成功したときの「SUCCESS!!」の表情が可愛い。
日本語のセリフはほとんどなく、絵だけで状況を説明して笑いを取るスタイルは、これぞ4コマと思わせてくれます。
以前からTwitterでも大人気、関連グッズも多数発売中…とのことですが、本屋で見るまで存じ上げませんでした。4コマ専門誌以外の4コマをどう探すかが、個人的な今後の課題です。
『セレブ漫画家一条さん』(garnet)
大企業の社長である一条さんが、会社の経営をしつつもマンガ家として雑誌での連載を目指す。
お金に物を言わせるのは取材などの準備段階までで、マンガそのものは自分の力で描こうとしているところに好感を持てました。
一条さんを始め、経営者のキャラクターが多く登場することもあり、昨今なにかと話題になっている「マンガ家と収入」というシビアなテーマにも正面から向き合っています。
…まあ、それはさておき、一条さんの黒ストがエロい。そこに尽きる。