学校を舞台にした漫画において、部活動は欠かせない存在です。
教室で授業を受けさせているだけでは表現しづらい、キャラクターの本当の一面を見せることができますし、違うクラスや学年のキャラクターも自然に登場させることができます。
そのため、実際に部活動をしているかどうかはあまり重要ではありません。
女の子たちが部室に集まってお喋りをしている、その様子を見ているだけでも楽しいものです。
しかし、もちろん真面目に部活動に取り組んでいる作品も数多くあります。
ここでは、その部活の経験者はもちろん、未経験の方でも思わずやってみたくなる、そんな部活4コマをご紹介します。
ラッキーストライク!(みそおでん)
とあるトラブルに巻き込まれてソフトボール部を退部することになったレンは、気晴らしのために幼馴染のリンとボウリングで勝負をします。
スポーツ万能であるはずのレンが、その勝負では文学少女のリンに完敗。
実はリンはボウリング部に所属していたのです。
彼女の強さの秘密を探るため、レンはボウリング部への入部を決意します。
ボウリングは誰でも気軽に楽しめるレジャースポーツですが、それゆえにボールの投げ方をきちんと教わらないまま遊んでいる方も多いのではないでしょうか。
この作品には、ボールの選び方や投げ方、ボールが曲がる仕組み、ストライクを取る方法まで、ボウリングをするのであればぜひ知っておきたい情報が詰まっています。
また、単行本2巻の描きおろしページには「スコア100点を超える方法」が紹介されています。
100点なんて超えて当然と思われているのか、ボウリングの解説サイトでもあまり取り上げられていませんが、初心者にとって100点は大きな壁です。
作者もあとがきで書かれている通り、この描きおろしのためだけに単行本を買っても損はないと思います。
疾風ういんどみる!(晴野しゅー)
昨年のリオデジャネイロオリンピックでセーリング競技をテレビ観戦したとき、ほとんど風が吹いていないのにヨットがぐんぐん前へ進んでいて、どうやって動かしているのだろう? と不思議に思いました。
そこですぐに調べたりはしなかったのですが、この作品に知りたかったことが全て書かれていて胸がすっとしたものです。
風を感じるのが大好きな高校生、風見鳥ふうこが神代颯天(かみしろはやて)先輩に誘われてヨット部に入部し、セーリングの楽しさを知っていく作品です。
私が気になっていた、エンジンもオールもないヨットが前へ進む原理も丁寧に解説されています。
車や飛行機もそうですが、最初にヨットを発明した人はよくこんな仕組みを考えたなと感心します。
何より、主人公のふうこが可愛いんですよね。
一つのことに夢中になりだすと周りが見えなくなってしまう危なっかしさもありますが、いつも元気で礼儀正しい一面もあって、見ていて応援したくなります。
今回紹介する中では唯一連載が続いている作品なので、これからふうこがどんな風に成長していくのかを末永く見守っていきたいです。
パドラーズハイ(水屋杏里)
かつて家族旅行でラフティングをしたときの楽しさが今も忘れられない琴瀬優宇は、そのときのガイドである桑城光夏が教師として高校に赴任したことをきっかけに、クラスメイトの葉山愛里を誘ってラフティング部を立ち上げます。
私もかつて、中学校の修学旅行でラフティングをしたことがありました。
右や左、時には後ろと、次にどこに進むのか分からない緊張感は、遊園地のアトラクションでも味わえないものでした。
この作品には、そんなラフティングの魅力が描かれています。当時の私の気持ちに近いキャラクターは、優宇よりも、文芸部とかけもちをしている望月汐の方でしょうか。
普段運動をしない人ほど、一度自然の荒々しさを感じる体験をするとはまってしまうものです。
単行本発売時は芳文社の公式サイトでCM動画が配信されたり、描きおろしページには実在するラフティングチームがゲスト出演したりと、かつてないラフティング漫画として期待は大きかったと思われます。
しかし、現実は1巻発売の数ヶ月後に打ち切り。
4コマでは珍しいことではありませんが、本当にもったいない……。
みことの一手!(宇城はやひろ)
囲碁部員の楠みことは高校生離れした棋力を持っていますが、後ろ向きな性格が災いして試合では全力を出せずに負けてばかりいました。
そんなみことが、幼稚園時代からのライバルである蛍、後輩の葵や文香たちと力を合わせて全国大会優勝を目指す作品です。
作中には囲碁に関する小ネタが散りばめられていて、大学時代に囲碁部に所属していた作者の経験が活かされています。
また、みことが囲碁について説明してくれるおまけページ「みことの囲碁講座」の内容も分かりやすく、囲碁未経験の私でも基本的なルールが理解できました。
この作品の特徴は、みことが最初から囲碁の経験者で、本来の実力は作中でもトップクラスであることです。
少年漫画には「主人公最強」という作品も多いですが、部活4コマではあまり見た記憶がありません。
部活4コマにはその活動内容を読者に紹介するという目的があるので、主人公を初心者にした方がストーリーを進めやすいのでしょう。
ただ、技術でなく心を成長させるという「みことの一手!」の手法は好みだったので、こういう作品がこれからも出てきてくれることを願います。
ねこみみぴんぐす(まりも)
現在開催中の世界選手権で13歳の張本智和選手が躍進を続けており、日本の卓球界は今までにない盛り上がりを見せています。
そのニュースを見たとき、かつてまんがタイムきららキャラットで連載されていたこの作品を思い出しました。
鈴白高校卓球部の日常を描くこの作品の主人公は、ねこみみの生えた少女、小春ひより。
え、ねこみみ? と面喰ってしまいますがファンタジー作品ではなく、ひよりもねこみみが生えている以外は普通の女の子です。
むしろ、どうしてねこみみが生えているのかは最後まで明かされません。
設定の唐突さとは裏腹に、内容は直球すぎるくらいの部活青春もの。
幼馴染の紫陽花(しようはな)は、ひよりに卓球の才能がないことを見抜いていて、ひよりが辛い思いをするくらいなら厳しい練習なんてさせない方が良いと考えていました。
しかし、卓球を楽しみつつも強くなりたいと練習に励むひよりを見て、花は自分が怖がっていただけなのだと気付きます。
ひたむきに頑張る女の子たちの姿が、作者のまりもさんの息をのむような精密な絵柄で描かれています。