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【特集】『こみっくがーるず』のかおす先生は、はんざわかおりさんなのか?

記事のタイトルがひらがなばかりで読みにくい……。

それはさておき。『こみっくがーるず』のアニメ、来月からいよいよ放送が始まりますね。

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主人公は、女子高生4コマまんが家の萌田薫子。ペンネーム「かおす」。

かわいい女の子たちがキャッキャウフフしているという、きらら系4コマのフォーマットを守りつつも、「まんがを仕事にすることの難しさと厳しさ」というテーマに正面から向き合っている作品です。

しかし、アニメへの期待が高まると同時に、ある疑問も湧いてきました。

かおすは、作者のはんざわかおりさんがモデルなのか? ということです。

はんざわかおりさん自身もかつて、学生時代に「りぼん」で『いちごオムレツ』という作品を連載していた「女子高生4コマまんが家」。すべてフィクションだと考える方が不自然ではないでしょうか。

そこで今回は、『いちごオムレツ』などの過去作品を資料とし、かおすとはんざわかおりさんの共通点に迫ってみたいと思います。

 

はじめに:まずは『いちごオムレツ』と『キルミンずぅ』を読もう

この記事を書くために読んだ作品は2つ。『いちごオムレツ』『キルミンずぅ』です。

残念ながら、どちらもAmazonの在庫が切れてしまっているため、マーケットプレイスで購入させていただきました。

アニメ化に便乗して、新装版を出してくれないだろうか……。

 

まずは、『いちごオムレツ』。「りぼんオリジナル」「りぼん」で2000年~2008年に連載されていた、足かけ9年の長寿4コマです。

冒頭で、はんざわかおりさんも「女子高生4コマまんが家」だったと書きましたが、連載当初は中学3年生なので「女子中学生4コマまんが家」でした。さらに、連載中に大学に進学されているため、「女子大生4コマまんが家」だった時期も……。

 

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引用:『いちごオムレツ』1巻19ページ

本編もさることながら、はんざわかおりさんのファンとして注目したいのは、各ページ上部の「おまけスペース」です。

ブログやSNSが今ほど普及していなかった時代は、こうしたスペースで作者の近況を確認していたのではないでしょうか。

この記事の内容も、主にこの部分に書かれていることを情報源にしています。

 

続いて、『キルミンずぅ』。2009年~2010年に放送されたテレビアニメ『あにゃまる探偵 キルミンずぅ』のコミカライズです。

絵柄やキャラの等身なども、だいぶ『こみっくがーるず』に近づいてきていますね。

 

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引用:『キルミンずぅ』1ページ

カオスなギャグまんがだった『いちごオムレツ』から一転、「いかに女の子をかわいく描くか」をつかめずに最初は苦労したと、はんざわかおりさんは単行本のあとがきで述べられています。

このときの経験が、全方位かわいい漫画家まんが『こみっくがーるず』の生まれるきっかけになったのは間違いないでしょう。

 

それでは、上記2つの過去作品から、かおすとはんざわかおりさんの共通点をひたすら洗い出していきたいと思います。

 

共通点1:寮に住んでいる(いた)

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引用:『こみっくがーるず』1巻35ページ

はんざわかおりさんは、大学時代に寮で暮らしていたと、『いちごオムレツ』のおまけスペースで語っています。

いわく、「寮ではないんだけどまぁだいたい寮みたいなトコ」。おそらく一人部屋で、掃除当番や門限などがあったとのこと。

ご存知の通り、『こみっくがーるず』のかおすも寮生活を送っています。ただし学生寮ではなく、出版社の「文芳社」が経営する「女子まんが家寮」。

かおすたちのような女子高生も入寮していますが、成人していると思われる寮生もいます。社員寮に近い雰囲気なのでしょう。

寮を引っ越す際、はんざわかおりさんは『いちごオムレツ』のおまけスペースで「いつか寮まんがかきたい」とつぶやいています。

『こみっくがーるず』は、まさにその夢が叶った作品なのです。

 

共通点2:福島県出身

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引用:『こみっくがーるず』3巻72ページ

『こみっくがーるず』のかおすは福島県出身。青森県出身のフーラ先輩とは、東北の雪国トークで盛り上がります。

そして、Wikipediaにも書かれているように、はんざわかおりさんも福島県出身です。大学進学を機に、東京都に引っ越したとのこと。

荒井チェリーさん然り、福島県には4コマまんが家を輩出する土壌があるのでしょうか?(この2人だけと言ってはいけない)

 

共通点3:ペンネームがひらがな

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引用:『こみっくがーるず』1巻73ページ

『いちごオムレツ』は、はんざわかおりさんの本名である「半澤香織」名義で描かれています。

今のペンネームになったのは、『キルミンずぅ』から。画数が多く、ファンレターでもよく間違えられていたため変更したそうです。

ちなみに、一番すごかったという誤字は「羊沢番おり」。確かに、小学校・中学校くらいの子には難しいですよね。

かおすの本名「萌田薫子」も、「薫」の画数が多い。また、「萌」って書くのが意外と難しい(「萠」と間違える)というネタが『きんいろモザイク』にありました。

「かおす」というシンプルなペンネームも、ファンが手紙を送りやすいように考えられたものなのかもしれません。送ってくれるのはかおすのお母さんだけみたいですが……。

 

共通点4:「あばばば」が口癖

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引用:「きららファンタジア」メインクエスト第1章

かおすの代名詞ともいえる、「あばばば」。

スマホ向けRPG「きららファンタジア」でも、はんざわかおりさんがイラストを担当した敵キャラのシュガーが「あばばばばば!!!」とうろたえるシーンがありました。きらファン、わかってる。

この「あばばば」、他ならぬはんざわかおりさんの口癖でもあります。『いちごオムレツ』のおまけスペースを見た初対面の相手からも、「ほんとにあばばばあばばば言うんだね!」と言われてしまうとのこと。

ただ、私も似たようなことを言ってしまうときがあるので、かおすとはんざわかおりさんの気持ちが少し分かります。

緊張していて、それでも黙ってはいけない、何か言わないといけないと思っているからこそ、「あばばば」と口走ってしまうのです。

もし、話している相手が突然「あばばば」言い出したとしても、笑わずに優しく次の言葉を待ってあげてください。

 

閑話:はんざわかおりさんはバレーボール経験者だった

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引用:『こみっくがーるず』2巻76ページ

はんざわかおりさんは、小学校から中学校までバレーボール部に所属していました。

中学3年生のときには、海外の試合での県選抜チームにも選出されたそうです。

『こみっくがーるず』にも、少年まんが家の翼が、スポーツまんがを描くためにバレー部に体験入部するエピソードがあります。

なぜバレー部? と思いましたが、作者が一番よく知っている(描きやすい)スポーツだからなのでしょう。

はんざわかおりさんの身長は中学2年生の時点で168cmあり、しかしそこで成長が止まってしまったとのこと。

もし身長が伸び続けて、本格的にバレーの道に進むようになっていたら、『こみっくがーるず』はこの世に存在しなかったのかもしれません。

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共通点5:猫が好き

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引用:『こみっくがーるず』2巻42ページ

私の勝手なイメージですが、まんが家さんには猫好きの方が多い気がします。

生活が不規則になりやすい職業なので、家の中で飼える、散歩させる必要がないなど、犬よりも飼いやすいのが理由かもしれません。

多分に漏れず、はんざわかおりさんも猫好きです。『いちごオムレツ』には、猫をこよなく愛する猫瀬川宰(おさむ)というキャラが登場するほど。

『キルミンずぅ』はもっとストレートに、主人公のリコが着ぐるみ姿の猫に変身するお話ですよね。

『こみっくがーるず』にも、かおすたち人間キャラに負けず劣らず特徴的な猫が登場します。

大きい犬に驚いて「にゃばばば」していたら仲間たちとはぐれてしまったという、かおすを彷彿とさせるような猫、その名も「にゃおす」

福島の実家では猫に囲まれた生活を送っていて、猫とのふれあいに飢えていたかおすは、にゃおすを寮に連れて帰りました。

都会暮らしでなかなか猫と接する機会が少ない、はんざわかおりさんの心情を反映したエピソードなのでしょうか。

 

共通点6:相撲も好き?

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引用:『こみっくがーるず』3巻103ページ

『いちごオムレツ』が8年半の長期連載を終える直前、約6話にわたってパラレルシリーズが展開されます。

主人公の女子高生・有紗が魔法のステッキで力士に変身してしまうという、『スモガール』。

今でこそ「くだらないなぁ」の褒め言葉で済ませられますが、当時「りぼん」を読んでいた小学生女子はどう思ったのか……(案の定、賛否両論だったらしい)。

『こみっくがーるず』にも1コマだけ、まんがを描く気合を入れるためにかおすが四股を踏むシーンが描かれています。

これはこじつけでは……と自分でも思いますが、好きでなければ違う作品で二度も相撲ネタは描かないのではないでしょうか。

 

共通点7:母親に「先生」と呼ばれる

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引用:『こみっくがーるず』2巻114ページ

はんざわかおりさんは、お母さんに「キャオリン先生」と呼ばれていたそうです。

さすがにメールや電話の中だけだと思いますが、お茶目なお母さんですよね。

そして『こみっくがーるず』のかおすも、母親のはる子に「かおす先生」と呼ばれています。

かおすのモデルが作者自身だとすれば、はる子のモデルは間違いなく作者のお母さんでしょう。

まんがを描いていることを、家族や親戚に隠しているまんが家さんも多いと聞きます。

単に自分の作品を読まれるのが恥ずかしいのか。あるいは、まんが家という不安定な職業に対する偏見を恐れてなのか。

そうした意味で、はんざわかおりさんはとても恵まれています。

中学、高校、大学と、目まぐるしく環境が変わっていく時期にもまんがを描き続けられたのは、本人の努力もさることながら、親の理解があったからに他なりません。

もちろん作者もそんなことは分かりきっていて、支えてくれた家族に感謝しているはずです。

というより、『キルミンずぅ』では実際にお母さんに支えてもらった(原稿を手伝ってもらった)とか……。

理解あるかおすの母親と対比させるように、『こみっくがーるず』3巻には翼の母親が登場します。

翼の母親は、娘がまんが家になるのを良しとせず、大学卒業後には家業を継がせようとしている。

子どもの将来を案じる親と、自分の夢を親に認めてもらいたい子ども。親の存在が描かれること自体が少ないきらら作品において、3巻の展開は異色です。

「翼さんみたいに才能もあって努力もおしまない方がほめてもらえないなんて」「自分が否定されるより…かなしいです……!」

極度の人見知りで、普段は自分の意見をほとんど主張しないかおすが、翼の母親に対しては珍しく感情をあらわにしていました。

何も、まんが家に限った話ではない。子どもの夢を親はだまって応援してあげてほしいという、はんざわかおりさんのメッセージなのかもしれません。

 

共通点8:まんがを描くことをやめなかった

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引用:『こみっくがーるず』3巻33ページ

中学3年生から8年半、三大少女漫画雑誌と呼ばれる「りぼん」で連載していた。

はんざわかおりさんが、同業者も羨むような輝かしい経歴を持っているのは周知の事実です。

しかし、まんがタイムきららMAXで『こみっくがーるず』を連載していること、そして今回『こみっくがーるず』がアニメ化されたことは、決してその栄光に頼ったものではありません。

『キルミンずぅ』を描いてから、『こみっくがーるず』の連載が始まるまで、3年近くの空白期間があります。

その間、はんざわかおりさんが何をしていたのかは分かりません。ブログの2015年4月29日の記事では、しばらく漫画を描けていない時期があったと述懐しています。

yaplog.jp

ひとつだけ言えるのは、まんがを描くのをやめなかったこと。

まんが家として一度は成功した人が、きららへの持ち込みを続け、アンソロジーコミックなどにも参加し、『こみっくがーるず』を連載するようになる。

それは紛れもなく、はんざわかおりさんが自分の手でつかみ取ったものなのです。

『こみっくがーるず』のかおすもまた、愚直にまんがを描き続けているキャラクターです。

女子まんが家寮で冬に毎年開催される、ボツネームを燃やして焼きいもを作る親睦会で、かおすは大量のボツネームを持参しました。

かおすには、まんが家の才能がありません。連載はおろか、読み切りさえ雑誌に載ったことがほとんどない。つまり、これらのボツネームは完成形が世の中に出ていない、正真正銘のゴミです。

しかし、たとえ誰にも読まれなくても、かおすは手を抜かずにネームを描き続けました。その結果、3巻の終盤ではついに連続ゲストを掲載するに至っています。

そうしたかおすの姿は、「ボツネーム製造機」と化していたという数年前のはんざわかおりさん、そのネームの中から『こみっくがーるず』を生み出したはんざわかおりさんの姿に重なるのではないでしょうか。

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まとめ:『こみっくがーるず』のかおすは、はんざわかおりさんだった

最後に、あらためて結論を書いておきます。

『こみっくがーるず』のかおすのモデルは、作者のはんざわかおりさん。これはもう、間違いない。

福島県出身だからとか、猫が好きだからとか、表面的な理由だけではありません。

家族や仲間に恵まれ、その人たちに報いようとする姿勢。結果が出ない時期も含めて、まんがを描き続けた姿勢。それらすべてが、はんざわかおりさんの生き様にそっくりなのです。

今後、アニメの放送にあわせたインタビューなどで、はんざわかおりさん自身の口からこの件について語られる日が来るかもしれません。

そのときはもう一度この記事を読んで、「全然的外れなこと書いてるよこいつ」と笑ってください。